今年の干支は「子」。かつて日本全国のガス管や水道管には「ねずみ鋳鉄管」という種類の管が使われていた。新潟県上越市の状況を市ガス水道局に聞いた。
ねずみ鋳鉄管は1975年頃まで製造されており、同市内では1970年頃まで主にガス管に採用され、埋設されていた。断面がネズミ色であることや、鋳鉄組織内の黒鉛が線状でネズミの尻尾のように見えることなどから、ねずみ鋳鉄管と呼ばれるようになったとされている。
材質の特徴として、鋼管に比べ腐食に強い反面、材質がもろく、地震などの大きな力が加わった場合に割れたり折れたりするなどの損傷が発生しやすい。このため1996年度のガス事業法改正で、国は新たにねずみ鋳鉄管を埋設することを禁じ、強度や管の伸びに優れた「ダグタイル鋳鉄管」が採用されるようになった。
1959年頃のねずみ鋳鉄管の工事の様子(上越市ガス水道局提供)
上越市ガス水道局は2005年度に、市内に残るねずみ鋳鉄管15.9kmを含む耐震性のないガス管総延長97kmの入れ替え計画を策定し、2020年度の完了を目標にした。ところが、2007年1月に北海道北見市でねずみ鋳鉄管の亀裂から漏れたガスに含まれていた一酸化炭素で3人が死亡するガス漏れ事故が発生。計画を8年前倒しし、2012年度を完了目標にした。工事は順調に進み、計画よりも1年早い2011年度に入れ替え工事は完了。現在、市内でねずみ鋳鉄管は使用されていない。
同市ガス水道局には、ねずみ鋳鉄管を埋設していた当時の約50年前を知る人はほとんどおらず、唯一覚えている職員は「パトロールで回ると、ガス漏れを探知することも多く、応急工事をしていた」と話す。
現在は高い柔軟性と伸縮性があり耐震性に優れ、腐食の心配がない軽量な黄色いポリエチレン管が主流で、災害に強いガス管が埋設されている。