「ヒヒーン」と跳びはね豊作祈願 上越市横畑集落で3年ぶり小正月行事「馬」

新潟県上越市桑取地区の横畑集落に古くから伝わる五穀豊穣(ごこくほうじょう)を願う小正月行事「馬」が2023年2月11日、同市横畑の古民家カフェ「平左衛門」で行われた。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの実施となり、地元住民や子供たちが馬をまねて「ヒヒーン」と声を上げて跳ねると、会場は歓声や拍手に包まれた。

馬をまねて跳び上がり五穀豊穣を願う小正月行事「馬」

横畑集落の伝統行事「馬」は、かつて旧暦の小正月である2月15日に行われていた。若者が扮(ふん)する「大馬」と、子供が扮する「子馬」が集落の各戸を回り、茶の間で跳びはねてその年の豊作を祈願した。耕作に馬が必要だったことが由来とされている。

集落の人口減少などにより、1978年に一度途絶えたが、1998年に地元有志によって復活。2003年からはNPO法人かみえちご山里ファン倶楽部(石川正一理事長)が主催し、伝承に取り組んでいる。

田んぼの悪霊を追い払う「田ならし」

この日は感染症対策として参加は地元住民に限り、約90人が集まった。馬の披露の前には田んぼの悪霊を追い払う「田ならし」が行われ、竹の棒を持った3人が「田なーらし、田ごーしらえ」と言いながら畳を掃くように棒を滑らせた。

その後、腰に鈴を付け、頬かむりをした馬役が登場し、2人1組の計6人で部屋の角を3回ずつ3周跳ねて回った。先陣を切った市立潮陵中の生徒は軽快に、同谷浜小の児童ら子馬役は元気いっぱいに跳び上がった。最後は大馬役の大人が「ヒヒーン」と雄叫びを上げ、畳を踏み鳴らしながら力強く跳ねる姿に、会場からは「よいしょ」という掛け声が上がるなど、大いに沸いた。

軽快に跳びはねた潮陵中生徒

谷浜小児童らは元気いっぱいな馬を披露

潮陵中2年の男子生徒(14)は初めての馬役に「想像以上に疲れたけど楽しかった。地域の行事に触れられてうれしい。来年もまた飛びたい」と笑顔だった。

石川理事長は「少子高齢化の中、このような行事を通じて皆が集まり、絆を強めることが地域にとって大切。若者や子供たちの意見も取り入れ、楽しく親しんでもらえるような行事にして続けていきたい」と話していた。