新潟県上越市の第3セクター「リフレ上越山里振興」による雇用調整助成金など約3915万円の不正受給事件で2023年2月9日、同社の平井民夫社長と同社から調査を依頼された井之上彩弁護士が記者会見し、調査結果を公表した。経理総務担当者ら2人が不正に関与していたとして、同社は2人に対し損害賠償請求を含め厳正に対処すると表明した。
平井社長は昨年12月の記者会見で、不正受給は経理総務担当者が1人で行ったと説明していたが、「誤りだった」と訂正した。
調査結果によると、経理総務担当者ら2人は温泉宿泊施設「くわどり湯ったり村」の従業員について、実態とは異なる補助金申請用のシフト表を作成するなどしたほか、労働局の調査後に従業員の出勤実態が分かる予約受け付け表の一部を破棄した。また、2人がタイムカードを労働局に提出しないよう従業員に指示していたことが確認されたという。
2人は不正への関与と責任を認めているが、互いに主導したのは自身ではないとしており、主張は食い違っているという。
動機については、「雇用を維持する目的」と結論付けた。パートの職員が離職しないように実働時間より多い給与を支払ったり、関与した1人が会社の固定費削減のため自らの給与を減額したりした事実が確認されたという。
井之上弁護士は役員の責任について「直接的な不正への関与はないが漫然と会社経営を社員に任せていた」として、「責任がある」とした。市の責任については「指定管理の協定書上は市に責任はない」としたが、「施設運営にあたって会社と協議が行われており、会社経営について“無言の重圧”が社員にかかっていたことが考えられ、チェック体制などは再考する必要がある」と述べた。レストラン「ヨーデル金谷」のマネージャーについては2人のいずれからの指示にも逆らえなかったなどとして「責任がない」とした。
平井社長は「職員が行ったとしても、会社の責任」と述べ、今後の指定管理者としての運営について「不祥事を起こし、資格がない」と述べた。市は指定管理の取り消しも含めて検討するとしている。
経理総務担当者の代理人も会見
調査結果の公表を受け、不正に関与した経理総務担当者の代理人を務める馬場秀幸弁護士が記者会見した。昨年12月の会見で平井社長が経理総務担当者1人の責任としたことについて「事実誤認がある。経理総務担当者が不正受給に関与したことは間違いないが、もう1人も関与していた」と述べた。経理総務担当者について「前社長に請われて財務立て直しのために入社し、赤字を出すなと言われていた。3セクの厳しい経営状況で重圧を感じて不正受給に関与してしまった」と説明した。
馬場弁護士は、不正に関与した2人について責任は同等と説明した。関与したもう1人がすでに会社に対して1500万円を提供しているとして、経理総務担当者も損害金の補てんとして同額の1500万円を会社に支払う予定だと明らかにした。その上で「まだ返済しきれないお金があるというのであれば、上越市議会の中できちっと議論していただきたい」と述べた。