決算書から見る上越市3セク助成金不正受給 社長会見の矛盾を検証

新潟県上越市の第3セクター「リフレ上越山里振興」による雇用調整助成金など約3915万円の不正受給事件。同社の平井民夫社長は記者会見で、助成金の受給自体を知らなかったと説明し、「総務担当者が1人で勝手に行っていた」などと話した。しかし、公表されている同社の決算資料の内容は、会見での社長の説明と矛盾している。決算書など誰でも見られる公表資料をもとに検証する。

「助成金受給知らなかった」

2022年12月16日、弁護士を伴って会見した平井社長。今年9月までの労働局の調査により不正が判明するまで、会社が助成金を受給していたこと自体知らなかったと説明した。そして、助成金の申請と受給について「(私は)指示していない。職員が1人で勝手にやった」。また、不正受給した助成金が、毎年の決算でどのように計上されていたかについて問われると「わたしが見ても分からない」と答えた。

決算資料で検証

公表されている同社の決算資料を見てみよう。

リフレ上越山里振興株式会社 24期(2020.4〜2021.3)報告書
https://www.joetsutj.com/uploads/2022/12/a0a56406dda24170b0d7d098f14f2913.pdf

リフレ上越山里振興株式会社 25期(2021.4〜2022.3)報告書
https://www.joetsutj.com/uploads/2022/12/95e68ccf1b76e32d54ec48f12603d376.pdf

2年分の損益計算書

新潟労働局から不正受給を指摘された期間は2020年4月から2022年7月まで。このうち2020年度、2021年度は決算が済んでいる。まず、計算書類のうち、その年度の会社の収支と利益を示す損益計算書を見てみる。

営業外収益の雑収入として2020年度に2355万円、2021年度に2505万円が計上されている。不正受給した金を帳簿に適正に記載していたとすれば、この雑収入という勘定科目以外に相応額が計上されていそうな場所はない。

事業報告「助成金で黒字に」と明記

次に、計算書類の数字だけでは分からない定性的な情報を記載する事業報告書。2020年度分には「全社の概況」として次のような記載がある。

24期も前期に引き続き第三セクター経営健全化方針に基づいて作成された「経営改善計画書」をベースに取り組むところでした。しかし、新型コロナウィルス感染症の与えた影響は大きく、手探りの経営となりました。そうした中、資金繰りを円滑にするため政策金融公庫、新潟県の助成制度を活用して2000万円の借入を行い、4月から雇用・緊急雇用安定助成金制度も申請して1870万円の助成を受けて全従業員の雇用を確保しました。その他、持続化給付金200万円など各種給付金の申請を行い、総額で2225万円の給付を受けました。また、市による指定管理者への損失補填は一時的に補填は受けたものの最終黒字決算となったため全額返金の処理を行いました。
3月には長期借入金4,200万円(2口 3,000万円 1,200万円)を完済しました。

2020年度の事業報告書(太字は編集部)

コロナ禍などで経営が厳しかったが、不正に受給した雇用調整助成金などで、黒字決算になり、借金も返済できたという内容だ。2021年度も同趣旨の記載がある。

そもそも助成金受給自体「知らなかった」、決算も「分からない」という社長の言葉に反して、助成金の額まではっきり記載されている。

施設別のより詳しい説明も

さらにより詳細な「施設別営業概況」もある。

◆くわどり湯ったり村(ゆったりの家含む)
大幅な減収で営業利益は▲12,675千円でしたが、雇用・緊急雇用調整助成金を4月から受給したことより経常利益は黒字となりました。

◆ヨーデル金谷
急な売上の乱高下に感染症対策が上乗せされ業務多忙を極めまし営業利益は▲320万円となりましたが雇用調整助成金等により経常利益は黒字となりました。

2020年度の事業報告書(原文ママ)

ここでも、黒字になった原因が、雇用調整助成金であることがはっきりと述べられている。

株主総会で社長が説明する内容

これら、事業年度ごとの損益計算書、事業報告書などの書類は会社法で作成・保存が義務付けられており、通常、同社規模の会社であれば株主総会で社長自らが説明する内容だ。

さらに、登記簿によると同社は取締役会設置会社で監査役設置会社なので、こうした書類については監査役が監査し、取締役会が承認するというプロセスを経る必要がある。

同社は毎年6月に株主総会を開いている。社長は今年6月までに少なくとも2回の決算総会を通じてこうした内容を聞いたり、自ら説明したりしていることになる。

社長自身が助成金の受給自体を知らなかったとか、「総務庶務担当の1人が勝手にやった」、決算書について「わたし自身中身は把握できていなかった」などという記者会見での説明は、これら公開されている書類が示す内容と大きく異なっている。

社長含む9人が無給の非常勤役員

登記簿によると、同社には役員10人がいる。このうち社長を含む9人が非常勤だという。会社の経理について平井社長は「あとの祭りだが、ほとんど会社に任せっきりで済ましてきてしまった」「私も非常勤。取締役はすべて無給・無償で、地域のために施設をなんとかしようという意気込みで今までやってきた」と説明している。

債務超過で4000万円超えの支払い命令

労働局からは不正受給額約3915万円に加え2割のペナルティーの支払いを命じられているが、同社は12期連続で債務超過となっている。その額は決算書によると前期末で約3600万円。平井社長は「市の3セクなので単独では考えるのが難しい状況。行政と相談したい」と説明しているが、極めて困難な状況にある。約9割を出資する上越市が事実上今後について判断することになるとみられる。

待たれる調査結果

同社では弁護士に依頼して調査を進めており、結果がまとまり次第あらためて公表するとしている。

関連記事