新潟県上越市の下門前町内会(市村輝幸町内会長)は今年、町内に伝わる「かに池伝説」の紙芝居を制作した。2022年11月13日、町内の小学生などに呼び掛け、完成した紙芝居「たびの絵かきときんびょうぶ 〜下門前かに池ものがたり〜」を初上演した。紙芝居は地域の言い伝えを子どもたちに知ってもらおうと、同市の地域活動支援事業補助金を活用して制作した。
伝説の内容は、昔、安江に住む裕福な男が家宝として金びょうぶを買ったところ、「絵を描かせてほしい」とみすぼらしい姿の旅の絵描きの男がやって来て、墨で子どものいたずら書きのように絵を描きびょうぶを台無しにしてしまった。怒った男が消すように絵描きに言い、絵描きがたらいに水を入れてびょうぶを傾けて筆で払うと、絵がカニの姿に変わり、たらいの中に入った。そのカニを捨てた池を地域の人は「かに池」「がに池」と呼び、池にいるカニは絵から抜け出たカニなので食用にはならなかったというものだ。
かに池があったとされる場所には「蟹池地蔵尊」があり、かに池の名はイオン上越店(富岡)近くの下門前の「かに池交差点」や「かに池公園」に残っている。
紙芝居の脚本は市内で「あべちゃんの紙芝居」として活動している阿部葉子さんが、8枚の絵は美術大学出身の岸田國昭さんが担当した。
この日は密集を避けるため、3回に分けてお披露目された。初回には小学生や幼児、保護者など約30人が集まり、阿部さんが紙芝居を読んだ。市立有田小学校1年の女子児童(7)は「かに池の話は知らなかったので、昔はそうだったんだと思った」と話し、父親(43)も「住んで10年くらいになるが、(伝説を)知らなかった。地域の歴史を知り、勉強になった」と語った。
紙芝居制作を発案した市村町内会長(66)は「子どもたちが地域のことに目を向けて記憶に残り、大人になってもかに池を思い出すきっかけになってくれれば」と話していた。
同町内会では、今後ほかの紙芝居も購入するなどし、定期的に町内会館で上演会を開くことにしている。