レルヒ少佐直伝のスキー術詳細に 指導受けた明治の体育教員「メモ」上越市に寄贈

1911年(明治44年)に新潟県上越市で日本で初めてスキーを伝えたオーストリア・ハンガリー帝国の軍人、レルヒ少佐から直接指導を受けた体育教員が残した一本杖スキー術のメモが2022年8月31日、所有者から市立歴史博物館に寄贈された。軍隊に限らず一般に広く普及が図られたスキーの教育関係者への広がりを具体的に示す貴重な資料だ。

「レルヒ少佐」と書かれた部分を示し宮崎館長に祖父、豊次郎さんのメモを寄贈する孫の秀夫さん(左)

メモを残していたのは、高田師範学校などで体育教員を務めた山岸豊次郎さん。豊次郎さんの孫で新潟市東区に住む秀夫さん(88)が今年4月、父の武夫さんの遺品整理中に発見した。

豊次郎さんが記したメモ「スキー使用法」によると、レルヒ少佐が日本に初めてスキーを伝えた約1か月後の1911年(明治44年)2月、スキー講習会が開かれ、高田師範学校に勤務していた豊次郎さん(当時39歳)ら県立学校の体育教員にレルヒ少佐らが指導した。

豊次郎さんが残したメモ「スキー使用法」。3行目に「レルヒ少佐小暮少尉指揮ノ元ニ」とある

メモはスキー板の手入れや保存方法に始まり、着脱の仕方、立った姿勢、滑走や方向転換、止まり方、斜面での倒れ方などレルヒ少佐直伝の一本杖スキー術が、高田師範学校の原稿用紙5枚にわたって詳細に筆で書かれている。

一、傾斜地ノ滑走法

山ガ右ノ場合ニハ前ヘノ号令ニテ杖ヲ右に構ヒ 一、左足ヲ軽ク滑リ出シテ其膝ヲ屈シ 二、右足ヲ前ニ滑リ出シ且ツ右脚ハ伸バシタルママ滑降スルモノトス(原文ママ)

秀夫さんは、祖父がレルヒ少佐の指導を受けたことは知らなかったという。同市大貫2の日本スキー発祥記念館で開かれた寄贈のセレモニーで「(メモの)価値は分からなかったが、『レルヒ』の文字があった。多少なりとも皆様のお役に立てるようならうれしい」と語った。

歴史博物館の宮崎俊英館長は「教員を養成する師範学校の教員の(スキー講習の)参加を示す具体的な資料で、教育におけるスキーの広がりを示す貴重なもの」と話した。

寄贈されたメモは17日から12月4日まで高田城址公園内の歴史博物館で開催される企画展「日本スキーの黎明」で展示される。