カーフェリー「あかね」の売却でジェットフォイルによる旅客輸送のみとなっている小木―直江津航路について、佐渡汽船は中古カーフェリーを購入し、2023年3月25日から就航させる方針だ。同航路のカーフェリー就航は2年ぶり。佐渡汽船はカーフェリーの再導入に伴い、上越市など関係自治体に財政支援を求めている。
カーフェリー再導入で車両輸送可能に
佐渡汽船が購入を検討しているのは、愛媛県の宇和島運輸(本社八幡浜市)が所有する2001年建造のカーフェリー「えひめ」(2486総t)。輸送能力はあかねとほぼ同程度で、定員610人、乗用車152台を積み込める。今年6月まで瀬戸内海の八幡浜(愛媛県)―別府(大分県)に就航していた。
小木―直江津航路には2015年4月に新造船のあかねが就航したが、二つの船を並べたような「双胴船」特有の揺れが乗客の不評を買うなどして赤字が続き、就航からわずか6年後の2021年3月に運行を休止し、売却された。あかねに代わり同年4月から佐渡汽船の新潟―両津航路で運行されていたジェットフォイル「ぎんが」が1日2往復で就航したが、車両や貨物の輸送ができず、上越市や佐渡市などの地元は早期のカーフェリー再開を求めていた。
カーフェリーの再開で、運航期間はジェットフォイルより1か月前倒しし3月25日〜10月31日となり、1日2往復の運航予定。所要時間は現在の約2倍の2時間40分となるが、佐渡での日帰り滞在時間は2時間長くなり7時間35分となる見込み。マイカーや観光バスなどの車両輸送が復活し、定員も2倍以上になることから、観光の活性化などが期待される。
就航後3年間は大幅な赤字予想
2022年8月9日に開かれた上越市議会文教経済常任委員会所管事務調査での上越市の報告によると、船舶変更に必要な佐渡汽船と国との事前協議が完了したことから、佐渡汽船は宇和島運輸との具体的な交渉を開始する。
佐渡汽船は、「佐渡島の金山」の世界遺産登録が実現した際の観光客増加を除外してもカーフェリー就航後10年間で同航路の収支は数億円が改善するものの、赤字は継続すると見込んでいる。カーフェリーは自己資金で調達するが、減価償却費が発生する就航後3年間は大幅な赤字が予想されることから、航路維持のため県、佐渡市、上越市の支援を求めている。具体的な支援額は購入に向けた交渉中として公表されていない。
上越市の阿部俊和産業観光交流部長は「来年3月の就航に向け、県や佐渡市と支援額などを相談していく。具体的金額を決定する際には、経営戦略や現状など市民が理解できるものかどうか、支援方法も含め総合的に判断したい」と述べた。支援の予算化は2023年度以降になるという。
佐渡汽船は今年3月、交通事業支援会社の「みちのりホールディングス」(本社東京都)の子会社となり、経営再建を図っている。