ミニボート事故直江津港で多発 上越海上保安署が注意呼び掛け

操縦免許が不要なうえ、インターネットなどで簡単に購入できる手軽さから、海釣りなどで多く利用されている「ミニボート」。手軽さの反面、海に関する知識や法令などを学べる機会が少なく、毎年海難事故が多く発生しているのが現状だ。上越海上保安署(吉田勝昭署長)は減らないミニボートによる海難事故を防ぐため、「ミニボートの危険を知った上で使ってほしい。今一度、安全について考えて」と広く注意を呼びかけている。

ミニボートとは

ミニボートとは船体の長さが3m未満、約2馬力未満の船舶のこと。小型船舶操縦士の免許や登録が不要のため、釣り目的で沖に出るために気軽に利用する人が増加している。一方で、波の影響を受けやすい不安定な船体構造や、サイズが小さいために他の船舶から発見されにくいといった特徴もあり、海難事故が多く発生している。

転覆や曳航救助事案が多発

同署によると、今年4月から5月下旬にかけての直江津港におけるミニボート転覆事故の認知件数は3件。

8月には大人1人、子供2人が乗るミニボートがエンジントラブルにより岸に戻れなくなり、曳航救助する事案が発生した。

10月には直江津港内でミニボート浸水事故が発生。長野県から釣りに訪れた50、60代の男性2人が乗るミニボートが波を受けて船内に海水が入り込み、半沈没状態になったあと、付近の消波ブロックにミニボートを係留し、防波堤に上陸。釣り道具などを車に運搬しようと西埠頭ソーラスゲート内の立ち入り制限区域に立ち入ったことから、通報される事態となる事案があった。

今年10月、直江津港で半沈没状態になり、消波ブロックに係留されたミニボート(上越海上保安署提供)
ミニボート

過去10年間のミニボート事故は13件

過去10年間の直江津港でのミニボート事故は13件。所有者を県別に見ると、新潟県が7人と半数を占めたほか、長野5人、群馬1人となった。海難発生状況を見ると機関故障、転覆及び浸水が全体の約7割を占めた。主な原因としては操船不適切が3件、気象海象不注意が5件あった。過去10年、管内ではミニボート海難による死亡や行方不明はなかったものの、負傷者が1人発生している。

認証旗を掲げ救命胴衣着用を

同署ではミニボートの事故防止対策として、① 船内ではバランスに注意 ②認証旗など他の船舶に認識されやすい道具を掲げる ③気象海象に注意し遠くへ行かない ④発航前連絡手段の確保、救命胴衣やオールなど万が一に備える ── など事故防止対策を呼びかけている。

吉田勝昭署長は「海難事故だけではなく、『自分だけは大丈夫』ではない。(周囲も)『危ない』と声をかけ、通報する体制づくりも大切」と話している。

海保がウォーターセーフティーガイドで事故防止呼びかけ

これらの事故を防ぐため、海上保安庁はミニボートを安全に利用するための「ウォーターセーフティーガイド」のミニボート編(https://www6.kaiho.mlit.go.jp/info/marinesafety/00_totalsafety/03_miniboat/00_mini.html)をインターネットで公開し事故防止を図っている。