長い髪をなびかせ、さっそうと馬を駆る美しい姿の上杉謙信……今年も上越市の謙信公祭に登場するGACKTさんが謙信役を務める背景には、「上杉謙信女性説」があるのかもしれない。そんな謙信のミステリアスな面が作家の想像力を膨らませるのか。新進作家、篠綾子氏の『女人謙信』が、このほど文芸社から文庫本書き下ろしで発売された。
上杉謙信は女性だった、という俗説の根拠はいろいろある。
(1)生涯、妻をめとらなかった(側室も置かなかった)
(2)死因は「大虫」という更年期障害だった
(3)月に1回、城に閉じこもった
(4)鎧などから、身長156cmほどの小柄であった
(5)女性が好む色の服装を好んだ
GACKTさんが2007年にNHK大河ドラマ『風林火山』で上杉謙信役を務めた際、「女性説があるという人物像を感じさせるような演技をしたい」と述べており、長い髪で役に臨んだ。GACKTさんはこのドラマを契機に上杉謙信ファンとなり、謙信公祭の出陣行列などで謙信公役を務めることになった。
このほど発刊された『女人謙信』は、春日山城主・長尾為景から男児誕生を切望されながら、女子として誕生する場面から始まる。男名の「虎千代」と名付けられ、春日山・林泉寺で学ぶ。男子として成長した虎千代は戦場では、天性の才能を生かし、次々と越後を統一し、やがて兄から家督を譲られる。次なる敵は、甲州の武田信玄。しかし信玄は、景虎が女装で信州を旅した時に出会った恋しい男であった。運命は二人を川中島の死闘へ──。
ご当地歴史小説として楽しめるほか、登場する謙信公をGACKTさんのイメージで読み進めると、ぴったりではないだろうか。
文芸社文庫。356ページ。799円。