上越出身の外交官、芳澤謙吉の伝記を出版

福岡市に住む医師、樋口正士さん(71)はこのほど、新潟県上越市諏訪出身で外務大臣や外交官として活躍した芳澤謙吉 (1874-1965) の伝記「芳澤謙吉 波乱の生涯」=写真=を出版した。

樋口正士さん著「芳澤謙吉 波乱の生涯」
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芳澤とは縁もゆかりもない著者が、なぜ260ページにも及ぶ伝記を手掛けることになったのか。10年以上前、日本の近現代史の重大な分かれ目である満州事変(1931年)の真相や、張作霖爆殺事件(1928年)の実行犯の真偽について調べていたという。史料をひもとくうちに、「いろいろな所で史料に(名前が)出てくるので、興味を持った」。総理大臣や閣僚以上に大使、公使、総領事らに頻繁に出会い、愛国心と不撓不屈の精神で、国家の命運を握る外交官として大業を成し遂げた芳澤を見出し、「ここ(諏訪)で生まれ、世界に羽ばたいたということを、みんなに知ってほしい」という一念で、著作にのめり込んだ。

執筆は芳澤の自伝「外交六十年」を核に、上越市の「芳澤謙吉顕彰会」(古川正美会長)から提供を受けた資料や独自取材を盛り込み、時代背景を加味して書き上げた。

第1章の「おいたち・外交官への道」から始まり、駐中華民国特命全権公使、 駐仏国特命全権大使を経て、第8章は1932年に犬養内閣の外務大臣に就任するまで。後半は貴族院議員時代、初代中華民国大使時代を描いた。

2013年4月21日に芳澤記念公園で開かれた記念茶会で上越市を訪れた樋口さんは、「国難が降り掛かっている今の日本に(芳澤謙吉が)生存していたら、いかに対処するかが見たかった。さぞかし墓の中で歯ぎしりしているのではないか」と話していた。

A5判。グッドタイム出版。価格は2100円で、Amazon.co.jpで取り扱っている