市民の手で保存運動が行われていた旧大和上越店(上越市本町4)のシンボル、人魚像が2011年9月14日、約300m離れた本町5のランドビル1階に移転した。高田文化協会が市民から集めた募金など50万円をかけて移設したもので、9月17日午後3時から除幕式が予定されている。
人魚像の移設は市民団体が高田区地域協議会の地域活動支援事業として申請していたが採択されず、暗礁に乗り上げていた。ビルの取り壊しが迫ってきたことから、募金を元に同協会が独自に移設を進めていた。
人魚像は上越市生まれの児童文学作家、小川未明の「赤い蝋燭と人魚」にちなみ、1975年の大和上越店オープンに合わせて設置された。著名な彫刻家による芸術作品ではないが、素朴で柔和な表情の少女の人魚像は親しみがあり、大和上越店のシンボル的な存在だった。
午前9時過ぎ、大理石で造られた重さ1.5トンの人魚像がフォークリフトに乗せられ、36年ぶりにビルから外に出た。作業を見守っていた関係者は「石肌が白くてきれい」「太陽でキラキラ輝いて美しい」などと話していた。また、これまでは像の背後に回ることはできなかったため、初めて後ろ姿が披露された。
人魚像はトラックに乗せられ、高田文化協会が入居している300m離れたランドビルへ。約1時間かけて、1階入り口のオープンスペースに設置された。像の大きさは、貝殻の皿が幅2m10cm、奥行き1m50cm、人魚像の高さは1m60cm。
高田文化協会の河村一美事務局長は「小川未明の五十回忌の年に移設できて良かった。街なかの活性化につながればうれしい。多くの方に気軽に見にきていただきたい」と話していた。