新潟県によると今秋、上越地域ではクマの餌となるブナやミズナラなどの木の実が凶作や不作で、餌を求めてクマが人里に出没する可能性が高く、注意が呼び掛けられている。上越市では、2020年10月に清里区で男性がクマに襲われけがをしたほか、今年5月には五智の住宅地にクマが出没し捕獲されている。
餌のブナ、コナラなどが凶作や不作
木の実の調査は、県鳥獣被害対策支援センターが2021年7月1日〜8月31日に県内356地点で実施した。その結果、上越地域では主に奥山に分布するブナとミズナラが「凶作〜不作」。人里に近い地域に分布するコナラも「凶作〜不作」で、クリとオニグルミは「不作〜並作」と判断された。全県でも同様の傾向だった。
クマが餌を求めて人里や市街地に?
同センターによると、調査結果から今秋は冬眠前に栄養を蓄える時期に奥山での餌不足が予測され、人里に近い里山のほか、柿などの果樹や生ゴミなどを求めて人里や市街地にもクマが出没する可能性が高い。山でのキノコ採りなどは、過去に目撃情報がない場所でも注意が必要という。
“防御姿勢”で致命傷を防ぐ
上越市は9月28日、クマの人身被害対策などについて学ぶ学習会を市内2か所で開いた。
講師の長岡市のNPO法人「新潟ワイルドライフリサーチ」理事の今村舟さんは、クマと近距離で遭遇した時の対処法として、「うつ伏せで大の字になり、首の後ろで手を組んで頸動脈を守る“防御姿勢”で致命傷を防ぐ」と紹介。距離がある場合は、背中を向けずゆっくり後退しクマの攻撃を予防する行動をとる。
大声で脅す、石を投げる、棒でたたく、犬をけしかける、近づいて写真を撮るといったクマを刺激するようなことは「絶対にやってはいけない」(今村さん)。早朝や夕方に山に入る時は、活動が活発なので特に注意が必要という。
予防策は「身近にある餌をなくす」
またクマは記憶力に優れた動物で、畑の野菜などの作物や残渣、庭の果樹など良い餌場を知るとしつこく執着する。今村さんは「動物の行動を完璧にコントロールしたり、山を全て人間が管理したりするのは不可能で、電気柵やコンポストの設置、果樹の実の処分や伐採など、身近にある餌をなくすことが現実的で有効な人身被害の予防策。地域全体で対策してほしい」と話した。