上杉謙信のかつての居城、春日山城跡で2020年10月12〜15日、約100年ぶりに大井戸が清掃され、井戸底があらわになった。城跡の保全活動などを行う市民団体「春日山城跡保存整備促進協議会」が実施し、20日には地元の上越市立春日小4年生が井戸の縁を固めるため、土の運搬作業を行った。
本丸と天守台の西側に位置する大井戸は、縁が楕円形になっており、長い所で約8m、短い所で約6m、深さ約5.6mの巨大なもの。上越市文化行政課の草間敬子学芸員によると、廃城から400年以上、一度も水が枯れたことはなかったという。
井戸さらいは約12年前の同協議会設立時から検討されてきたが、ほかの保全活動が優先され、ようやく実現。同協議会が地元の「上新開発」に作業を委託。1mほど溜まっていた水をポンプで排水し、落ち葉や泥、ごみなどを約1m分、手作業で袋に入れて取り除いた。約100年前の大正時代に井戸さらいをした記録が残っており、それ以来の清掃となった。
20日、総合学習で春日山について学んでいる春日小4年生約100人が、井戸に土が流れ込むのを防ぐため、縁を固める用の土を三の丸下から運んだ。秋晴れの下、汗を流しながら土を詰めた袋を抱えて何往復もし、運ばれた土は同協議会員が井戸の縁に押し固めた。4年生は井戸さらいの前にも大井戸の見学に訪れており、底が見えるようになった井戸を見て「奇麗になった」などと声を上げていた。
作業後、同協議会の小林栄会長(77)は児童を前に「春日山城跡を語る上で欠かすことのできない井戸の底を見て、修復を手伝ったことを記憶に留めてほしい」と呼び掛けた。6往復したという男子児童(10)は「土は重かったけど、自分たちの自慢の春日山のために頑張った」と話した。