地域の映画愛を育んだ48年 自主上映団体「上越映画鑑賞会」が最後の定期上映

新潟県上越市で48年間にわたり映画の自主上映をしてきた団体「上越映画鑑賞会」が今年で解散することを決め、最後の定期上映会が2024年6月2日、同市本町6の高田世界館で開かれた。解散を聞きつけた人など大勢が訪れ、地域の映画愛を育んだ上映会のラストを見届けた。

高田世界館で開かれた最後の定期上映会

同会は、上越地域の映画好きな大学生ら若者8人で1976年に設立し、旧厚生南会館や旧高田中劇会館などで上映会を開いてきた。当初は名作を上映していたが、来場者増加や映画館との関係構築により新作も上映できるようになり、1980年代からは上越で上映されない新作を中心に、年5回の定期上映を行ってきた。

1986年から会員制を導入し、ピーク時の2000年代前半は270人以上の会員がいたが、複合型映画館のJ-MAXシアター開業や高齢化などで年々減少し、現在は61人に。さらにコロナ禍で150人ほどだった来場者が50〜60人に激減し、現在もコロナ前の水準には戻らず赤字が膨らんでいることなどから、今年4月の総会で解散を決めた。

上映会の運営を行う上越映画鑑賞会のメンバー

最後の定期上映会では、中国映画「小さき麦の花」(2022)を2回上映。解散と聞いて駆けつけた元会員など計約90人が訪れ、会場では「さみしくなります」などと惜しむ声が聞かれた。各回の上映前に、44年間同会の会長を務めてきた増村俊一さん(70)があいさつし、「今はJ-MAXシアターと高田世界館があり、上越の人は恵まれた映画環境にある。そんな風になった一つの力にはなれたかなと思っている。本当に皆さん今までありがとうございました」と話すと、大きな拍手が送られた。

夫と訪れていた同市下門前の女性(67)は「上越に引っ越して来たときはJ-MAXもなく、ここでいい映画を見させてもらい楽しみにしていた。残念だけど自然な流れかなと思う」と話した。

上映前にあいさつする会長の増村さん

増村さんは「今は上越で見切れないほど多くの作品が上映され、私たちの役割は果たしたと思う。すがすがしい気持ち」と晴れやかに語っていた。

今後は秋に「さよなら上映会」として、同会メンバーがエキストラ参加するなど増村さんが「一番思い入れが深い」と語る上越ロケの映画「ふみ子の海」(2007)を最後に上映し、近藤明男監督も招く予定。