新潟県上越市吉川区で2024年5月6日に孵化(ふか)が確認された国の特別天然記念物コウノトリのひなが、順調に成長している。5月30日現在、ひなは4羽が確認され、口を大きく開けて親鳥に餌をねだったり、羽をばたつかせたりしている。
巣は高さ約10mの電柱の先端部にあり、親鳥のつがいは4月2日に抱卵を始め、約1か月後の5月6日に親鳥がひなに餌を吐き下して与える様子が見られ、孵化が確認された。野生コウノトリの1971年の絶滅以降、野外コウノトリの繁殖は県内初となった。
生まれたひなの姿は巣に隠れて数日は見えなかったが、毎日観察を続けている同区在住の市議会議員、橋爪法一さん(74)によると、孵化から6日後に巣の木々の間からひなのくちばしが動く様子が確認できた。孵化から3週間以上たった30日には、首の下あたりまで巣から見えるまでに成長。時折、ひなの全身が観察できることもあるという。
親鳥は交代で魚やカエルなどをひなに与えているほか、枯れた木の枝や草を頻繁に運び、巣を手直ししたり、拡張したりしている。橋爪さんは「親鳥が巣を整え始めると、生まれて数週間ほどのひなも一緒に手伝う姿がほほえましい」と話す。また1週間ほど前からは、短時間だが、親鳥が2羽とも巣から離れることもあるという。
コウノトリの野生復帰に取り組む兵庫県立コウノトリの郷公園主任研究員で兵庫県立大学大学院の布野隆之准教授(47)は、「親鳥2羽とも巣を離れるのは、ひなが順調に成長し、ひなだけでも大丈夫と判断しているからだろう。またコウノトリは大食漢で、ひなが大きくなるにつれて親鳥は大量の餌を採ってこなければならない」と話した。コウノトリに天敵はいないが、冷え込みや高温などの気温の急激な変化はひなへの影響も大きいという。
6月中旬には、上越市も協力し、同公園のスタッフが個体識別のための足環をひなに装着する予定。巣立ちは7月中旬以降の見通し。
国内のコウノトリは2005年に野生復帰に向けた放鳥が始まり、今年4月末現在、全国には362羽の野外コウノトリが確認されていて、2023年は兵庫県以外の地域では27のつがいから60羽のひなが巣立っている。