特定外来生物のアライグマ根絶に向け上越市で県内初の講習会 生態や防除方法など学ぶ

全国で農業被害などが深刻化しているアライグマの生息が新潟県内でも確認され、県は昨年6月に防除実施計画を策定し根絶を目指している。特に生息数が多いとみられ、重点防除地域に指定された上越地域3市では地域住民にも防除に参加してもらおうと、県は2024年3月12日、県内初となる捕獲従事者養成のための講習会を上越市春日山町3の春日謙信交流館で開いた。

上越市で開催された県内初のアライグマ防除講習会

北アメリカ原産のアライグマは、1970年代にアニメの影響でペットとして流通し、その後野生化、定着したとされる。雑食で野菜や果物、魚類や両生類、鳥類など幅広く食べるため、農林水産業や生態系に被害を及ぼす特定外来生物に指定されている。繁殖力が高く全国に分布を拡大しており、2019年度の農業被害額は北海道や近畿、関東を中心に全国で約3億6000万円と増加傾向にある。

上越市内で2021年に捕獲されたアライグマ(上越市提供)

県内では2010年に初めて捕獲されてから2017年までの捕獲数は3頭だけだったが、2018〜2020年の3年間では計24頭と急増し、上越市でも昨年度が4頭、本年度が6頭と増加。県は2022年までの痕跡調査などから、県内全域に分布している可能性が高く、特に上越地域3市では定着拡大の恐れがあると認定。防除実施計画を策定することで、講習会受講者による捕獲や生体運搬が可能になるなど捕獲要件が緩和された。

上越市柿崎区で2023年に捕獲されたアライグマ(県猟友会柿崎支部提供)

講習会には、動物防除に携わる団体などから約25人が参加した。長岡技術科学大学の山本麻希准教授がアライグマの生態や箱わなを使った防除方法などを解説し、「このままだと新潟の生態系が取り返しのつかないことになる今までにない怖い動物。移動能力や増加率が高く一度増えたら手遅れになるので、早く手を付けないといけない」と危機的な状況にあることを訴えた。参加した県猟友会上越支部の男性(70)は「初めて知ることも多かった。今捕らなきゃいけないことが分かったので頑張りたい」と話していた。

講習会では捕獲に使う箱わなの説明も行われた

防除実施計画では、市町村が主体となって防除を実施し、県が技術的支援や進行管理を行うとしている。県環境局の葉葺久尚環境対策課長によると、具体的な捕獲計画などは調整段階といい、「根絶を目指して市町村との体制作りをしっかり進めていきたい」と話していた。

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