知られざる直江津の「内蔵」を守れ 市民有志が能登半島地震による土蔵被害の相談窓口開設

能登半島地震で被災した新潟県上越市直江津地区の土蔵を守ろうと、2024年3月2日、市民有志が緊急相談窓口を開設した。あまり知られていないが同地区に点在する土蔵は建屋で覆われた「内蔵(うちぐら)」が多く、外からは見えないため、被害状況の把握が遅れている。修復が可能な場合もあり、直江津ならではの内蔵が必要以上に解体されるのを防ごうと、所有者からの相談や情報提供を呼び掛けている。

地震で土壁が崩れた上越市中央2の内蔵と所有者の男性

大火から家財を守る内蔵

直江津の土蔵は富の象徴ではなく、江戸から昭和初期にかけて大火が多かったことから家財を守るために建てられた。雨屋と呼ばれる建屋に覆われた内蔵が多く、日常生活の場として使用した座敷蔵もある。市民有志が立ち上げた「(仮称)土蔵を救う会」によると、土蔵の数は古い資料では約200棟、20年ほど前には28棟が確認された例もあったが、詳細は不明。

地震被害で必要以上の解体を防ぐ

能登半島地震では土壁が崩れるなどの被害が出ており、すでに解体された土蔵もある。救う会を立ち上げた一人、同市柿崎区の1級建築士、中野一敏さん(48)は「所有者は崩れたショックが大きく、建物へのダメージも大きいと思ってしまうと、必要以上に土蔵が解体され失われてしまう。取り壊さなくていいものについては、所有者に選択肢を示せたら」と話す。

土壁崩れても問題ない場合も

中野さんらは2月に東京から文化財などの補修の専門家を招き、中央2にある築100年以上の内蔵の被害状況を調査した。外側の土壁が下側部分を中心に広範囲に崩れているものの、内側のしっくい塗りの壁をはじめ、構造、骨組みなどの躯体(くたい)部分に損傷はなく、応急処置を施しておけば問題ないとされた。土蔵は地震の揺れで外壁が剥がれ落ちることで衝撃を吸収し、骨組みなどの損傷を防いでいるほか、崩れた土壁を練り直して修復に使うことも可能。内蔵は骨組みが露出しても建屋に覆われて風雨の影響を受けにくいことから、外壁の崩落の進行も防げるという。内蔵ゆえに被害の発見が遅れるデメリットが、逆に土蔵を守るメリットになっていた。

土壁が大きく崩れた中央3の内蔵

まずは緊急相談窓口に相談を

緊急相談窓口では、相談後に土蔵被害に詳しい専門業者を紹介し、現地確認や必要に応じた応急処置を有償で行う。地震被害を契機に直江津の隠れた蔵の町としての認知度を上げ、将来的には高田の雁木のような存在になることも目指している。

緊急窓口は中央1の斎京四郎事務所で、電話025-512-7560、ファクス025-512-7875、電子メールsaikyo4takanago@joetsu.ne.jp

土蔵の中の歴史資料の相談も

地震で被災した家屋や土蔵、倉庫などにあった古文書や民俗資料、文化財などの歴史資料については、市立歴史博物館(025-524-3120)と同市公文書センター(025-528-3110)が、保存や一時預かりなどの各種相談に応じている。

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