豊作願って跳びはね「ヒヒーン!」 上越市横畑伝統の小正月行事「馬」

新潟県上越市桑取地区の横畑集落に古くから伝わる小正月行事「馬」が2024年2月10日、同市横畑の古民家カフェ「平左衛門」で行われた。馬に扮(ふん)した大人、子供が「ヒヒーン」と声を上げて居間を跳ね回り、五穀豊穣(ごこくほうじょう)を願った。

五穀豊穣を祈る横畑の小正月行事「馬」

15〜30歳の若者が扮する「大馬」と、小学生から中学生までの子供が扮する「子馬」が集落の各戸を回り、居間で跳びはねてその年の豊作を祈願する伝統行事。耕作に馬が必要だったことが由来とされており、かつては旧暦の小正月である2月15日に行われていた。

集落の人口減少などにより、1978年に一度は途絶えたが、1998年に地元有志によって復活。2003年からはNPO法人かみえちご山里ファン倶楽部が主催し、伝承保存に取り組んでいる。

会場に飾るまゆ玉飾りを作る参加者

昨年は感染症対策として地元住民のみの参加となったが、今年は県内外から約80人が集まった。馬の披露の前には参加者で、縁起物のまゆ玉飾りを作った。白のほか、ピンク、緑に着色したもちなどをミズキの枝に付け、会場に華やかに飾りつけた。

トップバッターを務めた潮陵中生徒

竹の棒で畳をなで、田んぼの悪霊を追い払う「田ならし」が行われた後、腰に鈴を付け、頬かむりをした馬役が登場。地元の市立潮陵中と同谷浜小の子馬役が元気に跳び回るのに合わせ、観客は「よいしょ」と掛け声を上げた。

元気いっぱいの谷浜小児童の子馬

ほこりが立てば立つほど豊作といわれており、トリを飾った大馬役の大人たちは「ヒヒーン」と雄叫びを上げながら、畳を力強く蹴って跳ね上がり、会場を沸かせた。

地元桑取の中川幹太市長(右から2人目)も馬役で参加

初めて参加した青森県出身で上越教育大学大学院2年の男子学生(24)は「楽しかったけれど、体力を使い大変。地域の温かさやつながりがあってここまで続いていると思った」と話していた。

会場の建物で生まれ育った同市東吉尾の女性(75)は「懐かしい馬を見られてよかった。昔を思い出した」と微笑んだ。