吉川タイムズ盗用問題その後 虚偽説明で補助金不正受給の疑いも

この間の経緯と新たに判明した問題について説明します(すでに編集責任者のブログで紹介している内容を含みます)

地域協議会で虚偽説明 補助金不正受給の疑い

上越市は本年度、吉川タイムズに対して「地域活動支援事業費補助金」22万円の交付を決定している。この補助金は市内各地の地域協議会が採択・不採択を審査し、最終的には市(市長)が決める。

吉川タイムズが虚偽の説明をしたのは、吉川区地域協議会が補助金の採択・不採択を審査した昨年5月20日のプレゼンテーションの場だ。以下、その様子を市が公表している議事録などから検証する。

事業内容はネットも一体で展開

事業名は「季刊『吉川タイムズ』 発行事業」。「事業内容の概要」には次のように記されている。

新聞は年に4回、夏、秋、冬、春に発行する。A3両面カラー印刷。記者は吉川タイムズが公募し、または、記者としてふさわしい住民に依頼する。1号につき、10本。複数の市民記者に取材・執筆してもらう。記者の指導は団体が担う。編集作業は団体が行う。印刷は1,500部。市内の業者に依頼する。配布は、1,200世帯については、地元新聞店の折込にて行い、新聞購読者以外の世帯については、総合事務所、まちづくり吉川等、区内の適当な場所に配置することで全世帯に配布するよう努力する。市民記者に選ばれた区民は、吉川タイムズonlineにて、NHKの児童画廊のようなイメージで、動画で自己紹介を行う。記事もオンラインで展開する。

紙の新聞を発行するという事業が主だが、盗用記事が満載の「吉川タイムズOnline」も事業としては一体と説明されている。

「10年間の記事をよく読んで判断しろ」

事業内容の提案に対して、地域協議会委員からの書面での質問があった。

個人の一方的な思いを伝えるだけでいいのか。誰がチェックするのか(以下略)。

質問に対する吉川タイムズの回答はこうだ。

吉川タイムズは小池個人のメディアで公共性がないから事業に向いていないというふうに読める質問です。約10年間の記事をよく読んでいただいて、その訪問者数と読まれたページ数をもって、委員の皆様にはご判断いただければと思います。主宰の小池はプロのジャーナリストであり、実績もございます。上越市議会の取材では報道機関として認定されています。弊紙は吉川区発の唯一の報道機関です。地域協議会の取材を9年間、誰も傍聴者がいないなか、ひとりでビデオカメラを回していたのをご存じかと思います。また、今回の新聞は、小池が記事を書くわけではありません。吉川区の各代表機関に協力をいただきつつ、市民(記者)に書いていただきます。内容のチェックや編集は小池が行いますし、編集委員は、小池以外にも頼むつもりです。ご心配のように小池個人の新聞にならないよう、留意したいと思います。※誤解なきようお願いしますが、吉川タイムズは非営利事業です。約10年間、手弁当です。

10年間の記事というのはもちろんネットの「吉川タイムズOnline」の記事のことで、審査の時点ですでに著作権法違反の盗用記事だらけだった。

「盗作など著作権侵害はしない」

次に地域協議会が実質的に補助金採択を判断したプレゼンの際の質疑の議事録を見てみる。

【副会長】 提案書に報道機関とあるが、報道機関として認定とか登録を受ける必要はあるのか。

【吉川タイムズ】 そのような必要はない。私も法的なことを調べたが、ブログでも報道機関として裁判で認められた事例がある。私は9年間やっているが、過去に3件のクレームがあった。インターネットに掲載して、人権の問題などで削除する例はあるが、簡単に取り下げたりはしない。ブログだからよいということではないが、新聞の場合は活字として残るものなので、その辺は注意をして慎重にやっていきたい。

【副会長】プライバシーポリシーについては、どのように考えているか。まだ掲載されていないようである。今回、所見もあったのでぜひ取り組んでほしい。

【吉川タイムズ】 吉川タイムズのホームページの中にウエブサイトがあり、市民記者コードとして、やってはいけないことを6つ掲載してある。それを基に掲載している。プライバシーポリシーは掲載していないので掲載したいと思う。

ここで吉川タイムズが言及している「やってはいけないこと」を掲載した市民記者コードというのは次のものだ。

2021年5月31日の吉川タイムズOnlineのスクリーンショット


地域協議会への説明は虚偽

「盗作など他人の著作権を侵害しません」とはっきり書いてあるが、この時点で吉川タイムズOnlineは盗作記事だらけだった。

したがって、地域協議会へのプレゼンで説明した時点でも「盗作など他人の著作権を侵害しません」などという「市民記者コード」は、全く守られておらず、委員からの質問に対しての回答は、明白に虚偽だったことになる。

さらに、この市民記者コードが掲載されたサイトは、上越タウンジャーナルが盗用を指摘した後(2月27日頃)に閉鎖・削除されている。補助金の事業年度が終わらない時点で、地域協議会で約束した内容を反故にしている。

吉川タイムズは、補助金の実質的な審査を担った吉川区地域協議会に対して虚偽の説明を行い、その結果、公金が支出された。①吉川タイムズOnlineは著作権法違反の盗用記事だらけだった②「市民記者コード」を守るという説明は虚偽だった──という2つの事実を、吉川区地域協議会が知っていたら、この補助金は採択されただろうか。

上越タウンジャーナルでは市に対して補助金の取り消しを提案しており、市は事実関係などの確認や対応を検討している。

盗用問題のその後

約束はすべて反故に

吉川タイムズの編集長小池正春氏は2月25日に「お詫び」したいとして上越タウンジャーナルを訪れ、次の3つの約束をしました。

  1.  盗用したことを認め、すみやかに公表すること
  2. 盗用の全容を自ら検証し、公表し、読者に説明すること
  3. 上越タウンジャーナル以外からも盗用していることが明らかなので、その被害者(新潟日報社や上越タイムス社など)に対しても、上越タウンジャーナルに対して行ったように説明と謝罪をすること

しかし、これらのうち現時点で1つも実行されていません。

(この辺の経緯は上越タウンジャーナル編集責任者のブログで随時詳しく説明してきました)

関連記事