せんべい汁を手本に 上越は「謙信 勝負飯」

上越市は2014年に北陸新幹線開通と高田開府400年の節目を控えていることから、上越青年会議所では、上越が通過地点にならないよう「食によるまちおこし」を進めている。B級グルメの八戸せんべい汁で観光振興につなげた八戸せんべい汁研究所の木村聡事務局長から指針を探ろうと2010年9月8日夜、リージョンプラザ上越コンサートホールで講演会を開いた。講演前には、本場のせんべい汁が来場者に振る舞われた。

八戸せんべい汁
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上越は八戸と似ている点がある。

東北新幹線は2002年に盛岡-八戸間が開通したが、今年12月4日に新青森まで延伸する。このため八戸は通過駅になる可能性がある。上越も4年後に同様だ。

講演する木村事務局長
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八戸では、木村事務局長がたった一人で2003年に八戸せんべい汁研究所を立ち上げ、市民ボランティアとして活動を始めた。B級グルメのイベント「B-1グランプリ」を発案するなど、アイデアと企画力で、庶民の家庭料理だったせんべい汁の知名度を向上させた。せんべい汁を食べたいために途中下車する観光客が増加するなど、木村事務局長の、地元経済を元気にした手腕と手法を参考にしようと、講演会が企画された。

せんべい汁は、ネギやシメジ、ニンジン、白菜、肉などが入ったしょうゆ味の汁に、小麦粉と塩で作った南部せんべいを入れて煮込んだ素朴な家庭料理で、200年以上前から八戸市近郊で食べられている。だが、原料となるせんべい店は高齢化などで廃業が相次ぎ、200軒あった店が現在は13軒しかなくなっていまったという。

講演で、木村さんは当初、変人呼ばわりされながらも、せんべい汁は(1)八戸にしかないオンリーワン(2)菓子を料理に使う意外性(3)予想外の食感が驚きと感動を生む(4)素朴でヘルシーで栄養バランスがいいなど、素材の持つ力を信じたという。

せんべい汁を全国の人に知ってもらおうと、木村さんは全国各地へ出掛けて大規模な試食会を開いたり、B-1グランプリを発案するなど、話題づくりをしてマスコミに取り上げてもらう活動を精力的に続けた。

現在は居酒屋や小料理店など約180店のメニューに登場しており、近ごろではショットバーのメニューにもあるという。せんべい汁は夜のメニューなので、八戸に宿泊しないと食べられない。その結果、幅広い業界に経済効果が出たという。

中央での評価の高まりから、地元の人の意識も変わり、せんべい汁は自信と誇りを持って人に勧められる郷土料理になった。

木村さんは成功のポイントとして「ポテンシャル」「プロモーション」「プライド」の3点を上げ、中でもプロモーションについて「相手に的確に情報を伝えることが重要。情報戦を制することだ」と強調した。

同青年会議所の「地域産業・夢おこし委員会」では、せんべい汁を手本に、上越のご当地グルメを探ってきた。講演会の後、米持利則委員長が壇上に上がり、上杉謙信公が好んだ「湯漬け」をヒントにした茶漬け風の「謙信 勝負飯」を提案した。のぼり旗やイメージ色、上越産の米を使うことなどを決め、今年10月に行われる「越後・謙信SAKEまつり」を手始めに、全国へ発信する計画だ。

振る舞われた八戸せんべい汁
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