新鮮な味を全国へ 「割烹から松や」が急速冷凍した魚の卸売開始

新潟県上越市春日山町3の「割烹から松や」(大久保実店主)は2017年6月から、上越産の魚を新鮮な状態で広く流通させようと、急速冷凍技術で凍らせた魚の切り身や刺し身の卸売を開始した。上越の旬の味を全国に届けようと、上越市木田3の一印上越魚市場で鮮魚店や飲食店を対象に販売している。

急速冷凍機「リキッドフリーザー」を操作する大久保店主
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割烹から松やは約4年前から、「地元の魚をいつでも新鮮な状態で提供できるように」と、一印上越魚市場や上越教育大学大学院で食育を研究する野口孝則教授らと連携し、急速冷凍技術の導入を検討していた。2015年10月には、急速冷凍機「リキッドフリーザー」を購入。ノドグロやタイ、甘エビやサバなど地元の魚を職人の目で選定し、急速冷凍して販売することになった。商品は、独自ブランド「旬冷」と銘打った。大久保店主ら職人がさばき、袋詰めしている。

急速冷凍したタイや甘エビ、アジなど
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リキッドフリーザーは、市内では初導入。袋に詰めて真空状態にした魚の刺し身などを、マイナス35度のアルコール液に浸して急速冷凍することができる。魚の開きなどは約3分、刺し身は約5分で冷凍できるほか、500mlのペットボトルに入れた水も約5分で凍らせることが可能。凍らせるまでの時間を従来よりも短縮することで、食品へのダメージを最小限に抑えることができる。刺し身などは解凍時に液汁が出なくなるため、旨味が逃げなくなり、鮮度を長く保つことができる。一度急速冷凍すれば、家庭用の冷蔵庫でも保存が可能。供給が安定次第、市内のスーパーマーケットなどでも販売できるようにしたいという。

急速冷凍が実現したことで、魚の鮮度を保ちながら、アニサキスやクドアなどの寄生虫を死滅させることが可能となった。厚生労働省によると、2016年に国内で確認されたアニサキスによる食中毒の発生件数は、2014年の約1.6倍となる126件。大久保店主は「殺菌面の効果も期待できるので、今後は冷凍保存した魚の需要が増すのではないか」と話す。

一印上越魚市場で開かれた試食会
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6月27日には、「旬冷」の味を多くの人に知ってもらおうと、一印上越魚市場で試食会を実施。鮮魚店の店主などが集まり、タイやノドグロなどを試食していた。集まった店主らは「おいしい」「冷凍とは思えない」などと評価していた。

大久保店主は「魚の種類によっては、10年保存することもできる。悪天候で漁師が海に出られない日でも、『旬冷』ならば新鮮な状態の魚を提供できる。上越の味を東京などにも提供できるようになれば」と話している。