頑丈な「吉鉄」のスノーダンプ オギハラ工業がブランド引き継ぐ

新潟県上越市新保古新田の農業器械、除雪用品製造販売「オギハラ工業」(荻原潔社長)は、豪雪地帯で人気がある妙高市の「吉鉄」ブランドのスノーダンプ製造を引き継ぎ、今冬から自社製品と共に販売を始めた。

大、中、小の3種類がある「吉鉄のスノーダンプ」。重い雪でも使いやすく、頑丈であることが人気
スノーダンプ

豪雪地帯で人気の「吉鉄」

“吉鉄のスノーダンプ”は、これまで妙高市小出雲の吉鉄製作所が製造しており、1台1台手作りで、重いが頑丈なことで知られる。県内では上越地方や魚沼地方、長野県飯山市などの豪雪地帯で根強いファンを持っている。

吉鉄ブランド消滅の危機

社長の吉村たかしさんは独身で後継者がおらず、体調も悪かったことから、同業であるオギハラ工業の荻原社長と相談。2017年12月に、商標や販売権、金型など一式をオギハラ工業に売却・譲渡した。吉村社長は、その半年後の2018年5月21日に63歳で他界した。

スノーダンプのルーツは?

除雪や屋根の雪下ろしに広く使われているスノーダンプは1961年(昭和36年)に、石川県吉野谷村で鉄工所を営んでいた宮本勝さんと、父の清一郎さんが考案したとする説が有力で、三八豪雪(昭和38年)を機に広がったとされる。

上越では底が平らなタイプが主流

上越地域ではオギハラ工業が先駆で、2代目の萩原一雄社長が1969年(昭和44年)に製造を始めた。当初は底が丸いタイプだったが、71年(昭和46年)からは重い雪質でも使いやすい底が平らなタイプにし、「スノーブル」として本格的に販売を始めた。吉鉄製作所でも間もなく、底の平らなタイプで製造を始めたという。

両社はライバルでもあったが、吉鉄のスノーダンプは頑丈だが重い豪雪地仕様で、誰でも使いやすいオギハラ工業のスノーブルと棲み分けをしており、繁忙期には互いに仕事を助け合っていたという。

オギハラ工業が吉鉄を「忠実に再現」

頑丈に溶接されている接合部
厳重な溶接

故・吉村丘社長の姉で、妙高市在住の吉村紀美子さんは「吉鉄のスノーダンプじゃないとだめというファンが多い。めぐり合わせで吉鉄ブランドが存続でき、ラッキーだった」と話す。

オギハラ工業の4代目、荻原潔社長は「補強のためバケット先端の鉄板を二重にしてスポット溶接したり、強度上は問題ない部分でも溶接を省略せず、忠実に再現している。すごく手がかかっているが、そのぐらいしないと吉鉄ファンに申し訳ない。私としては、まったく同じ製品だと思っている」と話す。

「吉鉄」のロゴマークもそのまま
吉鉄ロゴ

バケットに付いた「吉鉄」のロゴマークもそのまま引き継いだ。サイズは大、中、小の3種類を製造しており、スノーブルとともにホームセンターなどで販売している。