「マスカット・ベーリーA」2027年に誕生100年 上越市の岩の原葡萄園創業した川上善兵衛が交配

新潟県上越市北方の岩の原葡萄園の創業者で、「日本ワインぶどうの父」と呼ばれる川上善兵衛(1868―1944年)が品種交配した赤ワイン用ブドウ「マスカット・ベーリーA」が、2027年に誕生から100年を迎える。同社は、今では日本で最も多く栽培される赤ワイン用ブドウのマスカット・ベーリーAをさらに発信し、日本のワイン文化の発展につなげようと2年をかけて記念事業を行う。

川上善兵衛とマスカット・ベーリーA(岩の原葡萄園提供)

気候風土に適したブドウ求め交配

大地主の家に生まれた善兵衛は、貧困に苦しむ農民救済のための新しい産業として1890年(明治23年)、22歳のときに葡萄園を開園し、ワイン用ブドウの栽培を始めた。海外から輸入した苗木は高温多雨の気候に合わず、54歳だった1922年(大正11年)から上越の気候風土に適したブドウを求め品種改良を開始。約20年にわたって1万311回の交配を行い、22種類の優良品種を生み出した。

マスカット・ベーリーAは1927年(昭和2年)にアメリカ系品種の「べーリー」とヨーロッパ系品種の「マスカット・ハンブルグ」を交配して生み出された。病気に強い上、ワインにした際にイチゴのような甘い香りと味わいの良いワインに仕上がる。同じ香りの成分はしょうゆやみそにも含まれており、和食の調味料との相性がいいのも特長の一つ。2013年には国際ブドウ・ワイン機構(OIV、本部パリ)の品種に登録された。

東京や上越で記念イベントなど

記念事業はイベントや限定商品の発売、同葡萄園を紹介する動画制作、雪室を併設し1898年(明治31年)に完成したワイン貯蔵庫の第2号石蔵(市指定文化財)の修繕など。このうち来年3月には東京でイベントを開催し、マスカット・ベーリーAを使用するワインメーカーが集まり、将来展望などを語り合ったり、各地域の食材との組み合わせを紹介したりする。同園でも同年5月に記念イベント、10月に記念収穫祭を予定している。

またワインの製造過程で発生するブドウの搾りかすから色素を抽出して染めた糸でロゴマークなどを刺しゅうした、社員の作業用ユニホームを導入する。

ブドウの残さから色素を抽出して染めた糸で刺しゅうした作業用ユニホーム

善兵衛の誕生日の3月10日に記者会見した高岡成介社長(62)は「善兵衛は農家の生活を楽にしたい、地元を活性化したいという思いで葡萄園を開いた。我々もその意志をしっかり継いで、おいしいワインを作り、発信して、地域の発展に少しでも貢献したい。次の100年に向けて、善兵衛が残した日本のワイン文化をもっと発展させたい」と語った。

マスカット・ベーリーA誕生100年の記念事業について記者会見する高岡社長

限定商品3月14日発売

限定商品は第1弾として、14日、マスカット・ベーリーAを使った「深雪花 赤 2024」を発売した。熟した果実やイチゴのような香りと、しっかりとした飲み応えがあり、すぐ飲んでも、3〜4年の長期熟成のどちらにも適したワインに仕上がっている。雪椿を描いたラベルは雪を意識した特別ラベルを採用した。スーパーや酒販店、同社オンラインストア含め6000本限定で、価格は720mlで2970円。

限定商品は2027年3月にも発売予定。

「深雪花 赤 2024」。オンラインストア用(左)と小売店用で2種類のラベルがある

NHK朝ドラ誘致組織発足

同社は10日、マスカット・ベーリーAを生み出した善兵衛の生涯をNHKの連続テレビ小説にしようと、「善兵衛朝ドラ会」を設立した。上越商工会議所や上越観光コンベンション協会、地元高士地区などと連携し、署名活動などを通してドラマ誘致を進めていく。署名活動は昨年7月から行っており、すでに約1万人分が集まっているという。

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