新潟県上越市の市立小学校で昨年2月、卒業を目前にした小学6年児童(当時)に対するいじめがあった。当時の担任が同年3月末の異動の際にいじめに関係する資料すべてを廃棄したことから、情報が中学校に引き継がれず、当時の児童が1年以上不登校になっていることが分かった。学校が作成したいじめの報告書もずさんな内容で、保護者は1年以上かけて訂正などの対応を求めてきたが、市教委が保護者に資料廃棄の事実を伝えたのはこうした手続きが全て終了した今年4月下旬になってからだった。市教委は今月、資料の廃棄など一連の対応について「あってならないことだった」と保護者に謝罪した。
小6年度末のいじめ 学校は卒業後6月に認める
児童は昨年2月、複数の同級生から言葉によるいじめを受けた。保護者や児童は担任に訴えたものの、十分な検証や対応がなされないまま卒業を迎えた。比較的小規模な小学校だったため、進学先の中学校では小学校と全く同じメンバーが同級生になり、間もなく不登校になった。中学生になってからも保護者が市教委に訴え続けた結果、昨年6月に小学校は市教委からの指示により事故報告書を作成し、ようやく事態がいじめだったと認めた。
聞き取りなく報告書作成 任意の開示も拒否
しかし報告書は、被害児童への聞き取りを行わずに作成されていた。保護者は完成した報告書を見せるよう求めたが校長が拒否。市教委に求めたが、任意では応じず、昨年11月に個人情報報保護法に基づく開示請求の結果、昨年12月下旬になってようやく部分開示された。しかし、報告書の内容は、児童と保護者が知る事実とは大きくかけ離れていた。
欠席の日に謝罪受ける? 事実と異なる報告書
昨年2月に保護者がいじめの事実を担任に伝えたにもかかわらず、報告書ではいじめの発生日時が3月とされていた。また、児童が欠席していた複数の日について、登校していたことになっており、児童の行動が記載されていた。実際は欠席していた日に、児童が学校で複数の加害者から謝罪を受けたという記載もあった。さらに、保護者によると担任は当時「自分が悪いんです」などと泣きながら電話してきたこともあったというが、こうしたやり取りについて学校側は「存在しない」と回答するなど、多くの点で事実と異なっていた。
保護者からの訂正請求には応じず
こうした点について、保護者は今年になって、個人情報保護法に基づき訂正請求を行った。家族や児童の同級生の保護者らとLINEで学校の対応などについて話し合った当時の具体的な通信記録や、自身の手帳の記載などの証拠を示して報告書の誤りを指摘した。しかし、市教委側は一部軽微な誤りは修正したものの、根幹的な部分については学校の出席簿や保健日誌の記録、関係者への聞き取りの結果を根拠に「報告書を修正する根拠が確認できない」と訂正に応じなかった。
市教委 手続き終了まで廃棄の事実知らせず
こうした報告書をめぐる訂正請求などの手続きが終わった今年4月下旬、市教委は初めて当時の担任が資料を廃棄していた事実を保護者に伝えた。それまでは「関係者に聞き取りをした」「資料はない」などと説明していた。市教委によると担任は昨年3月末の異動に伴っていじめに関する聞き取りメモなど一切の資料をシュレッダーにかけて処分していたといい、「いじめの記録を処分したという意識はなく、個人情報を持ち出さないようにした」と説明しているという。
保護者「なぜ隠した」「不信感しかない」
保護者は「担任の不祥事をなぜ隠していたのか。1年以上だまされていたことになる」とした上で「まったくでたらめな対応で、子どもの人生が軽んじられたとしかいいようがない。不信感しかない。小学校を卒業して1年以上が経つが何も解決していない。学校と市教委は苦しんでいる子どもに誠実に真摯に向き合ってほしい」と話している。