溺死事故から一夜明け実況見分 同級生らが現場に花

高田城百万人観桜会の会場となっている新潟県上越市の高田公園内堀で、男子高校生4人が乗った貸しボートが転覆し、同市北城町3の高校生井口ひかる君(15)が溺死した事故から一夜明けた2016年4月4日、現場では同級生らが花を手向け、手を合わせる姿が見られた。警察などによる実況見分が行われたほか、関係機関は対応に追われた。

内堀の水深を測るなど実況見分する署員
20160404実況見分

事故現場付近で花束を手向け冥福を祈る同級生ら
20160404花束

現場周辺は昨夜から規制線が張られ、関係者以外の立ち入りが禁止されている状態が続いた。午前9時過ぎには報道陣が詰めかけ、同10時50分、警察と消防の実況見分が始まった。2人の署員がボートに乗船し、転覆現場で堀の深さを測るなどしていた。午前には規制線が解除され、同級生たちが現場を訪れた。井口君と中学時代に同じバスケット部に所属していた同級生は「(井口君は)NBA選手を目指していた。一晩たっても信じられない。天国でも元気にいてほしい」と祈った。別の同級生は「だれにでも優しい友だち思いのやつだった」と花とジュースを手向けた。

内堀では昨年の観桜会期間中にも4歳児が貸しボートから堀に落ちる事故があった。この事故を受け、観桜会の主催者の一つ、上越市の観光振興課担当者によると、小学生以下の子供や身体障害者が利用する場合は救命胴衣を着用させるなど、安全対策に務めるよう、貸しボート業者には書面による注意喚起を行ったという。上越警察署によると堀の深さは約2m。救命胴衣の着用は義務付けされておらず、当時ボートに乗っていた4人も救命胴衣などは着用していなかったという。

亡くなった井口君を含む4人は同級生で3月に市内の中学校を卒業したばかり。井口君は4月から県立高田農業高校に入学予定だった。

高田農業高校では4日朝、職員を集めて職員会議を開いた。熊倉肇校長は井口君を知る同級生や上級生など生徒たちの動揺などを懸念し、職員たちには「生徒の心の変化や様子」を注意して見るように説明したという。熊倉校長は「自らの意思で農業を志し、希望を持っていたと思う。このようなことになり言葉が見つからない。ご家族にお悔やみを申し上げ、井口くんの冥福を祈るばかり」と肩を落とした。なお、同校では7日に行う入学式で、黙とうを捧げる予定だ。

上越市は、観桜会を主催する上越観光コンベンション協会、上越商工会議所とともに情報収集を行い、今後について協議を続けていくという。村山秀幸市長は「若い命が失われたことに胸が塞がる思い。心より冥福を祈り、ご家族にお悔やみを申し上げる。再発防止に向け、関係先と連携し、事実関係を確認し適切に対処するよう担当職員に指示した」とコメントを発表した。