世界遺産企画1 新潟県上越地方から見える富士山

日本最高峰の富士山(3776m)が2013年6月22日、世界文化遺産に決まった。富士山は、北は福島県、南は東京都の八丈島、西は和歌山県までの広い範囲から遠望でき、新潟県内でも群馬・長野県境の山々や、杉の原スキー場から望むことができる。いったいどんなふうに見えるのだろうか。

筑波大付属高校社会科教諭の田代博氏は、地図総合ソフト「カシミール3D」を使って作成した可視マップにより、富士山の遠望地を探る研究で知られる。「『富士見』の謎」(祥伝社新書)には、「妙高山、火打山、焼山からは八ケ岳と奥秩父の隙間に、前山に遮られることなく、かなりすっきりとした富士山を見ることができます。妙高山の北約11kmの大毛無山は、富士山から真北の方向として最遠望の山です(189km)。日本海に最も近い富士見の山でもあります。ここからは菅平の西にある大松山(1649m)の左側にかろうじて頭を覗かせるだけですが、富士山と確認することはできるでしょう」と書いている。

妙高山(2454m)から富士山が遠望できることは、古くから知られていた。日本山岳文学の名著「日本風景論」(1894年刊、志賀重昴著)では妙高山からの眺望について、「東南に浅間、富士あり」と書いている。山頂から見える富士山をカシミール3Dで描画してみた。富士山からの距離は179km。

妙高山から見える富士山(カシミール3Dで描画・クリックで拡大)
妙高山からの富士山

上越市在住の山岳写真家山田浩之さんが、火打山(2462m)の標高2200m付近で撮影した富士山の写真がある。1995年11月4日撮影で、朝焼けの富士が美しい。

火打山の標高2200m付近から望む富士山(250mm望遠レンズで撮影)
hiutihuji

田代氏は、妙高市の大毛無山から見える富士山については「証拠写真や目撃証言もない」としている。カシミール3Dを使って、大毛無山から見えるはずの富士山を描画してみた。

大毛無山の頂上から見えるはずの富士山(カシミール3Dで描画・クリックで拡大)
大毛無山からの富士山

登山をしなくても手軽に見える場所もある。妙高市杉野沢にある妙高杉ノ原スキー場のゴンドラの終点(1489m)から約100m移動した地点で、177km離れた富士山が遠望できる。同スキー場によると「晴れて空気が澄んでいる日の午前10~11時ぐらいに、肉眼ではっきり見ることができる」と話す。ゴンドラの運行は12月中旬から3月末までの冬期間のみ。

富士山が遠望できる場所に「富士見峠」「富士見平」などの地名が各地に点在している。上越地域では、笹ケ峰から登って妙高山と火打山へ登山道が分岐する地点が「富士見平」(2070m)であり、焼山と裏金山との中間(鞍部)には「富士見峠」(2082m)がある。